[感想]ライラの冒険(新潮文庫)



ライラの冒険 黄金の羅針盤(上)
フィリップ・プルマン



映画になった時に、読んでみたいなと思ってすっかり忘れてて、BSで放送されたときに思い出して、買ってきた。それからしばらく放置していて、やっと読みました。(映画はまだ頭しか見てません)

ん~ネタバレしないで感想を語るのは難しいですが、魔法系ファンタジー児童文学とみせかけた、かなり大人向けのお話です。
大人が読んでもかなり残酷なところや、難しい部分が多いですし、言わんとする所も子供ではちょっとむずかしいような。

一方ですごい派手でダイナミックなドラマなので、難しいところがわからなくても前半は面白いです。
でも全部(琥珀の望遠鏡まで)読み終わった後味としては、私は良くなかったです。なんだか嫌な印象になってしまった。

「黄金の羅針盤」「神秘の短剣」「琥珀の望遠鏡」の連続した三部作で、文庫版ではそれぞれ上下巻に分かれて6冊になっております。





あらすじ


そこは人間誰しもが守護精霊「ダイモン」をもつ世界。
オックスフォードで暮らすやんちゃな少女ライラは、
ふとしたことから魅惑的な未亡人コールター夫人の助手となって冒険の旅に旅立つことに…。
街々で起きている子供が攫われる事件と、オーロラから降り注ぐ謎の物質「ダスト」…
ライラは知らず知らずのうちに世界の存亡に関わる壮大な事態に巻き込まれていくが、
彼女がこれから成すことを、彼女は知らぬままに成さねばならない。
少女に下されている予言の名を、魔女たちは古くから知っていた――



ネタバレ無しで


魔女やら鎧を身に着けたシロクマやら、実に魅力的な種族とキャラクターが目白押しです。設定だけでもすごいんですが、各々のキャラクターが強烈で魅力的だな~と思います。思い返してみると結構多くのキャラクターが出てくるんですが、どれもこれもはっきりしたキャラクターで、目に浮かぶようです。
特に魔女は美しいキャラクターで、夢が広がりましたね~。映画見てないのでアレですが、映像が浮かんでくるようです。

物語は、謎が謎を呼ぶ壮大なファンタジー。それにしても予想を超えて複雑で雄大、そして深遠です。黄金の羅針盤を読んだ印象としては、科学色の強さとファンタジーの奇妙な入り混じりかたが、スチームパンク的な印象でした。それにしても実はかなり科学のお話が効かせてあって驚きます。そういうところをみると、これは大人向けなのかなって思います。難しそうな科学みたいな話が出てくるのにほとんど説明しないので。まあ、わかんなくても読めるっちゃ読めるのか?

それ以上に物語全体が結構残酷な感じで、大人向け…と思いました。いやまあ、子供って残酷な話に対して案外鈍感なのかもしれませんけども…結構エグいシーンが全体に散りばめられている印象です。私は…この本は大人におすすめします。

結論として、面白かったかというと、キャラクターは素晴らしいし、展開は物凄い。特に真ん中くらいまではぐいぐい引っ張られて面白く感じました。でも後半は…どうかなあ、かなり人によるかもしれない、と思いました。ネタバレしないで語れないし、ネタバレしたらダメな話なので、このへんにしておきますが、私個人は、印象の悪い後半でした。

ハリー・ポッターと比較されたりするらしいですが、…ハリー・ポッターはそういえば最終巻読んでないんだけど、カラーは随分違う用に思います。ハリー・ポッターは魔法の世界のお話、と思って読んでたけど、ライラの冒険は世界を超えたデカくて頑丈で恐ろしくて広大な話、だと思います。

まあでも、あんまり期待しないで読むとよい、と思います。






以下ネタバレあり












ネタバレありでちょっと


本の冒頭やらあとがきやらで結構ネタバレてる印象があって、それらすべてのネタバレがないほうが更に良かったと思うのですが…。

いきなりネタバレると、結局キリスト教の話に尽きるのですが、この解釈は共感できる人と出来ない人とわかれるんじゃないでしょうか…? んん~イギリスの作家さんで…その宗教思想が色濃く主張されているわけですが、んん~…ちょっと過激な気がしますですね。そういう意味でも子供向けではない、ような気がします。
私はキリスト教徒じゃないんですが、ちょっと今の心境からするとその思想には同意しかねるという内容でした。私がそうなのだから、キリスト教徒の中ではこれはかなり分かれるのではないでしょうか…。

ちょっと調べてみたら映画は、問題になりそうだから宗教色を排除した…とか。そういえば冒頭だけでも重要な機関の名称が変わってたり。まあ、そのようにした理由はわからなくもないですけども、それやっちゃうと、映画にする意味ないとも言えるかな。映画にしないほうが良かったかもしれませんね…。…イメージ写真だけにするとか…(笑)

読んでて、途中まで面白かったんだけど、途中から…グノーシス主義的な話が出てきたところから私の印象はガクッとなりました。そうなる人とならない人、いるでしょうけども。失楽園を題材に…という路線は期待が持てたんですが、そっちに行きますか…。結末も、そっち行きますか…。。っていうのが正直な感想でした。
なんか違うな~ダストの正体は、もうちょっと違う表現でいえば違うものになり得るのでは?という気がする。そうすれば結末も違ったのではないかな…と思う。

ライラとウィルはどっちも好きだし、イオレクもセラフィナも最高。仲間たちみんないいんですけどね…。
アスリエル卿とコールター夫人という怪物級のキャラクターは…、どこまでも深読みできるキャラクターですね。この人達はこの人達で別次元だと思う。描かれてない部分多いし。でも、恐ろしすぎて好きになれません。ライラも(少なくとも前半は)そう感じてたっぽいですが。どっちかっていうとトラウマです。

また、精神的に残酷なシーンが多かったり、孤独な登場人物がとても多い点など、物語全体が暗さと冷たさを帯びていると感じました。なんとも言えない猟奇的な気配があるし。空虚な感じがあるし。……なんかこう、いろいろと雰囲気から感じる部分で、嫌な感じがするところはいっぱいある。露悪的というか…、後ろ向きというか…。ちょっと苦手な空気。

だから、キャラとか展開とかすごくて面白かったんだけど、読み終わったあとは…… 正直、これは、売ったほうがいいかな…と思いました。100円コーナーで売られてた理由がわかったような気がしました…。

でもまあ、問題作であるほうが面白いとは言えるかもしれません。
それに、いろいろと論争のありそうなあたりにあんまり無関心な日本人には向きじゃないかな、というイメージが有りましたが、ネットでレビューを見ると、意外と高評価で、逆にあんまり気にせずするっと読める…のかなあ…。




ところで 結末の感じや、ウィルのキャラクター性など ジブリ宮﨑駿風味な感じがしました(笑)私の中ではウィルはジブリ絵で思い浮かんでた。コールター夫人とかも、ジブリ絵アリじゃないですかね!?




ライラの冒険 黄金の羅針盤(上)
フィリップ・プルマン



なんか思い出してたらちょっと吐き気がしてきた…ウッ…。
私にはこの思想は、合わなかったようです…。
やっぱり蔵書してないで 売ったほうがいいかも……
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2016/01/18 (Mon) 22:11 | # | | 編集
Re: No title

パトラッシュさん>

こんにちは、また遊びに来てくださってありがとうございます!今年もよろしくお願いします。


> ライラの冒険は「神秘の短剣」で中断したままでしたので、
> 本記事を良い機会と三部目「琥珀の望遠鏡」を手に取ったのですが、
> なぜこんな流れに?この人だれだっけ?と、
> 記憶と格闘しながらの読書でした…おかげで、全然進まないこと…。

さすがパトラッシュさんはいろいろ読んでらっしゃるんですね~!

> 失楽園がテーマという事で、
> アスリエル卿はルシファー的な役回りを担わせれているような。

私もそう思いました。はっきり明言されてないけど、途中でそれらしい暗示が出てたと感じました(人間の寿命を超えるはるかな過去から砦を作ってきたのではないかと…みたいな言及があった)。コールター夫人は、リリスなのではないかな?と感じていました。この二人の物語はあんまり語られてないけど、その辺のことを含めて書けば、アダムとイブの前の、真の人類誕生神話みたいな内容になるんじゃないかな、と深読みしたくなります。


> そして残酷さも確かにありましたね…ぽこぽこ人は死ぬし、復讐や拷問も有り
> …ってクマさん、それ食べちゃいますか…。

クマが食べちゃうのは個人的にカンドーしましたが、直接的・物理的な残酷さよりも精神的な残酷さの多い話だったな…と思いました。


> オーソリティの最後も含めて、
> 死者がダストとなり世界と交じり合うという流れは、
> つなげ方によっては汎神論にもっていけそうな気もしますが…。

汎神論的ですよね。でもどちらかと言うと、神はいないと言いたげな、むしろ人間の「意識」の神秘性のほうに重点を置いた感じが、うう~ん。我々日本の読者と著者との環境の違いなのだろうと思うんですが、ずいぶんこう、宗教に対して批判的で、嫌悪感を強く打ち出したなあと、書き手さんのその強い鬱屈した想いみたいなのを感じて、恐ろしい気がしました。特にメアリーが蛇を演じるところの話が、毒々しいくらいに。
輝かしい終わり方のように見えて、内側に充満する暗い想いを感じずにいられなかったところが、後味が悪く感じた点です。
我々もともと汎神論的文化を持っている日本人がこれを書いたら、もっとあっけらかんとして、あんまり論争もなく問題もなく、穏やかになりそうなところですが。


> なぜ、受け入れがたく、忌避してしまうのか。
> なぜ、フィクションとして受け流せずに、引っかかるのか…。
> もしかすると、苦手に思える本を読むことは、
> そんな内面や特性を見つめなおすのに、役立つのかもしれませんね…。

小説、それにかぎらず往々にして芸術は、作者の内面全体の表現だと、私は考えています。作品に触れることで、その人そのものの一部に間接的にながら触れている。その時やっぱり、この人怖いな…とか、この人苦手…とか、この人綺麗だなとか、この人暖かいな~とか、感じるんじゃないかなあ。
確かに自分と考え方の違うもの・ひと・意見に触れると、勉強になりますね。



> テンポドロップですが、恥ずかしながら、記事を拝見して初めて知りました。
> wikiではノーチラス号に設置されていたと?…お、覚えてなかったよ…。

私も全然覚えてなかったです(笑)あったっけ…なんかいろいろなものがあって…、読みなおして探してみるのも面白そうですね。

> 雪の氷晶核はエアロゾル粒子やバクテリアと聞いた事があるのですが、
> こちのダストはライラの世界のような、特別な意味はなさそうな。
> でも、天使のはしご呼ばれる現象に影響していたりと考えると、
> なんだか面白いかも。

ほんとにこれ不思議ですよ、単純に気温とはそれほど関係なさそうで、謎です。ライラの世界のダストみたいな謎の物質やエネルギーと関係ある、と言われても、納得してしまいそうに不思議で美しいですよ☆
作るのはかなり難しそうな感じがしますね…内部の液の濃度とかバランスがギリギリだからこうなるんだろうな、ってかんじが…。あと、割れるととんでもない刺激臭を放つとのことで、また大地震が来たら深刻な事になるのではないかと内心恐れています(いちおう耐震ジェルみたいなのでくっつけてはいるものの…)。


> 実は、バガヴァッド・ギーターの記事の後、
> 宗教家ではない方が記した入門本を探してみたり。
> そこで、以前読んだ「宗教で読み解く ファンタジーの秘密」の著者、
> 中村圭志さんの「教養としての宗教入門」を手に取ってみたのですが、
> サラリとした感じで、なかなか読みやすかったです。
> ただ、法華経についての著書があるからか、
> 仏教のページが他よりも多く割かれていたような気がします(笑)。

私はいまもインド哲学にはまっていますが、けっこー仏教用語で解説されることも多いんですよね。こうしてみると、日本人はやっぱり仏教徒なのか…と思いますね。仏教用語のほうが日本人的に公用語なんだなっていう。実際、私もギーターを読んですぐ納得できたのは、もともと仏教的な考え方にそれなりに親しんでたからなのだろうと気付きました。日本人は、案外、仏教思想に馴染んでいるんですね。


ペットロスについていろいろ情報をありがとうございます!
私も頭では、やはり「時間こそが癒し手」と理解しているつもりなんですが…(それにもう10年くらい経っています)
恐ろしいことに、ペットロスから立ち直ったのではないかと思ってまたペットを飼ってしまったんです(数年前のことです)。そうしたところ、今度は、自分より先にペットが死ぬ、またペットロスになる、という恐怖心に苛まれ続けることになってしまったのです。たぶん私はペットロスを克服していなかった、そして今もまだうまく折り合いつけられてないのだと思います。
しかしこういうことは、単に暮らし方だけでなく、思考のパターンや神経のつながり方における遺伝的な要素もあるのではないかと考えているこの頃です。神経質な血筋なのかも…と強迫神経症の祖母を見ていて思ってる最近です(笑)同じ時間と同じ方法を経ても、すっかり冷静になれる人と、なれない人といるんじゃないかな。つまり、完全に解決されるわけではないのではないかと…。どんな薬を塗っても傷跡が残る場合もあるし、そのくらいはある程度諦めるほうがいい場合もあるんじゃないか、と考えたほうがいいかもしれないなと。

もちろん現代においては、科学の理論(医学など)によって心身の問題を解決するというのも、有用な手段だと思いますが、それが完全で完璧に保証された解決策であるとはいえない、とも思います。まだまだ科学・医療も発展途上のものだと思うので。
苦しみが解決しないからこそ、もっといろいろ、科学も哲学も勉強していきたいなと思っています。

2016/01/19 (Tue) 10:51 | KMOK #WlAMjTRI | URL | 編集

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