[感想]クララ・シューマン―真実なる女性 (1970年)


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クララ・シューマン―真実なる女性 (1970年)
著:原田光子



シューマンファンになっちゃった私はシューマンの本を読みたかったのですが、シューマンの本よりクララの本のほうが多い。
クララはドイツではまさに天才少女の代名詞、伝説のヒロインで、色々お手紙とかも残ってたり、ロマンスのイメージがあったりするから…なのではないかと、思います。

この本はクララの手紙・日記などを元に、三人称でクララの人生を描いた伝記本です。
精彩で、清楚で、美しい文体。小説のように鮮やかな印象を残す感情の機微の取り出し方。
すごく丁寧で素晴らしい本です。

クララとシューマンに興味がなかったら、入れ込んで読むのは難しいかもしれません。かなり長いです。
もし興味がある人なら、ぜひとも一度読むべきだと思う! 演奏する方なら、きっと必読ではないでしょうか。






美しい文体


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この本、結構デカイ。ページはこのように二段になっていて、字も細かい。
それでいて277頁もある、ハードカバー。かなりの大作です!!

文体は非常に美しく、古き良き時代のファンタジーを読んでいるかのようです。三人称ですが、学術書みたいな説明調では全く無く、伝記っぽくなりすぎず、かといって創作っぽさもそんなに強くなく、堅実で真面目で清楚です。読みにくいわけではないのですが、かといって読みやすいわけでもなく、読み終わるには結構時間がかかっちゃいました。

日記手紙の引用がたくさんあって、それや他の情報を元に、小説のように流麗な伝記にまとまっています。ほんとに綺麗な文体なのです。ロマン派の音楽にふさわしい高貴さと甘美さを感じさせる。著者さんのご挨拶が昭和16年ですから、1941年…その頃のまさに教養高い聡明な淑女の文体なのですね。おお、なんと美しいのでしょうか…。



クララとロベルト…幻想の中に存在するような


クララに興味がある人というと、クラシック好きとかピアノを演奏する方とかになるのかもしれませんが、もっと多くの人にも読んで欲しいような美しい本です。

クララはロベルトのためにいろいろ苦労をした女性ですが、私もこれを読むまでは、んんん、ロベルトはダメな子だな~クララに迷惑かけまくって…ほんと、年下なのにクララは苦労しっぱなし、クララは大変だったんだろうな~と、普通に世間の人間的な目で見ていましたが、これを読むと… そんな次元ではない、ということが分かり、衝撃を受けました…。

シューマン氏が花をながめ、庭園の奥深くに歩まれ、美しい遠景に消えてゆかれるのをながめておりました。たそがれの陽光が彼のまわりに明るく映えていました。このときの感想を書くことはとうていできません。強くふるえながら、走り寄りたい思いを、あらんかぎりの力でこらえておりました……。医師たちはあなたを知らないのです。この僕でさえあなたを知る以前には、あなたがたのような人間やご夫妻は、ただもっとも美しい幻想のなかにのみ存在すると考えていたくらいですから……



後年のロベルトは錯乱してライン川に投身してしまい、幸運にも助けだされたけれど精神病院に入院させられてしまいます。面会謝絶状態のロベルトをこっそりお見舞いに行ったブラームスが、その印象をクララに送った手紙です。
クララとロベルトの間にある愛情がいかに、一般の人間とは異なるか…いかに強く神聖で、病気など超えうるものか、二人の引き合う絆は医学で遮れるような物質的で浅薄なものではなく、遮断されたことによって二人がどれほど見えない血を流して苦しんでいるか……ということをブラームスは言いたいんだと思います。

まさに、幻想や奇跡を見ているかのように神々しく清らかなクララの愛情がこの本に描き出されています。私も読んで、ブラームスの印象そのままに思いました。クララのような女性は、実際は、物語の中にしか居ないだろう…と、思っていた。本当にこんなに清らかで献身的で愛情深く、夫と運命のように結ばれて、揺るがない、そんな女性が存在しうるのだろうかと。特にロベルトが入院してしまってからのクララの美しすぎる悲嘆は、何度読んでも涙を止められません…。映画なんかよりもずっと、実際に残されたクララの手紙のほうが美しく悲しいのです、比較できないほどに美しい。

そしてクララがどれほどロベルトのことを尊崇していたかも、これを読んで、驚く思いでした。クララがロベルトを支え続けた理由の一つは、この人は天才であるという絶対的確信があったからなのだと思います。自分のものではない、後世の全ての人のために、ロベルトとその生み出す音楽を守らなければならないという使命感があったのだと思います。

あのようにたえまなく、創作活動が続けられる彼の頭脳は、なんとすばらしいものであろう! 彼の精神と人格を理解する知性と感性を、天が私に恵みたもうたことは、なんという幸福なことだろうか。何百万の女性たちと比べて、いかに私が祝福されているかを思い、また幸福すぎるのではないかと天にきくとき、私はしばしば不安に襲われる。…



このようにクララはロベルトの音楽を絶対的に信じていて、そのクララの御蔭でロベルトが有名になったとも言われているようですね。死後もロベルトの作品を演奏して広めて行った様子も記されています。
私自身、シューマンの作品を最初全く・全く・全く理解できず、ただ混乱していたばかりだったのに、頑張って聴きこんでいくうちに、…これは天才だ、天才の作品だ…と思わずに居られなくなってる。それはクララが愛情を持って確信していたからとかじゃなく、私自身がそう思うし、今も世界中に多くのファンがいるし、やっぱりロベルト・シューマンは天才だ!天才だったんだ!と思うこの頃です。

クララが有名なピアノ協奏曲を受け取った時の喜びを書いているのも、すごく感動しました。これを知ると、あの曲が更に大好きになってしまいますね。ほかにもロベルトがクララに送った数々の音楽の贈り物などのことも読むと、なんというロマンティックな…!!ロマン派というのは名前だけじゃあ無いんだ、名前だけじゃ!!!!! ミルテの花についても、知ってはいたけどこうして読んでみると、改めて衝撃的に感じました。ロベルト、ほんとに、すごい…なあ……。すごいよ、なあ…。




メンデルスゾーンとかブラームスとかリストとかその他もろもろ


シューマン夫妻を取り巻いていた有名な音楽家たちについてももちろんちょっと出てきますよ。ブラームスについては、特に後半よく登場しますが… ブラームスがいかに難しい人物だったか…逆にわからなくなっちゃいそうなくらい、複雑です。子供のような、ということなのかなあ。

また、ブラームスとクララは恋愛関係が疑われることがあるようですが、それについてクララがはっきりと子どもたちに書き残した手紙もあります。シューマンの指からなくなっていた指輪についても証言があります。

ただ、基本的にこの本は、シューマン夫妻を中心にしていて、ブラームスとクララの関係にスポットを当てた本ではないので…ブラームスとクララの関係をとことん知りたいという方はこれよりも、他の本がいいかもしれませんね。たしか、二人の手紙のやり取りの本が出ていたと思います。



クララ・シューマン ヨハネスブラームス 友情の書簡



これも原田さんの翻訳(編集はベルトルト・リッツマンさん)なのですね~!美しい文体なんだろうな。かなり高いのですが、いつか読んでみたいなと思ってます…。

そのほかお父さんとの難しい関係はもちろんのこと、メンデルスゾーンとの友情、リストとのびっみょうな関係、ワーグナーの音楽に対するクララの反応、他にも当時の素晴らしい歌手たちや、彼らを取り巻いていた友人たちなどなど…興味深い内容がいっぱいです。

シューマンファンなら、すごく興味深く読めると思います。しかし、一方で、シューマンの作品については、いちいちこの時期だとかそういう参照は思ったよりも少なかったです。まあ、作品数も膨大なのでいちいちあげとくと大変ですけども。あと、文中で触れてあっても作品番号が書いてないのが多いので、何調なんとか曲とだけ書かれても私にはピンと来ないのがちょっと残念でした。仕方ないけど。




というわけで、すごい情報量の、素晴らしい完成度の、美しい本です。
1700円って、むしろ…安い…気がしてくる。メジャーな内容でもないし、これ、3000円くらいしそうな感じがする。
シューマン好きな人はとりあえず読んでみて損ないとおもいます!!!



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クララ・シューマン―真実なる女性 (1970年)
著:原田光子

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