[感想]不安でたまらない人たちへ―やっかいで病的な癖を治す



不安でたまらない人たちへ―やっかいで病的な癖を治す
ジェフリー・M. シュウォーツ



手を洗わずにいられないとか、カギを確認せずにいられない…などの
強迫性障害(OCD)の治療法についての本です。
アマゾンで評価が高かったので買ってみました。

この頃自分も、非常に強い不安を感じるようになり、これが何なのかいろいろ考えた結果、強迫性障害に根本は同じ状態なのではないかと思い当たって、この本を読んでみました。

同時に認知行動療法の本を買って読んでみましたが、こちらのほうが非常にためになったし納得したのでまず紹介したいと思いました。




はじめにちょっと言っておくと、私は強迫性障害と診断されたわけではなく、自分でも軽度だと思います。強い不安と強迫観念がありましたが、強迫行為については日に数回の確認行為やメモする行為がある感じでした。だいたい自分でもこれが強迫行為とは思っていませんでした。


ちょっと厚め


結構分厚いハードカバーの本で、様々な患者さんの事例を折々紹介しながら、シュウォーツさんたちが開発した新しい行動療法のやり方を丁寧に説明しています。海外のドキュメンタリー番組を見ているみたいだなあと思いました、具体的な事例がちょこちょこ間に挟まってきて、ゆっくりと納得できるような構成です。こういうところが、生真面目で一方的な日本のテキストと違うなあ、と、なんとなく思いました。
その分、早く結論が読みたいわ、っていう人にはちょっと回りくどいところもありますが、章ごと最初と最後に大事なところをきちんとまとめてあるので、そこも素晴らしいと思います。


すごいぞ…強迫性障害の様々


シュウォーツさんは1000人もの強迫性障害の患者を扱ってきたそうで、その中のすごい事例をたくさん紹介してます。どれもこれも…すごいですよ…。単なる手洗いレベルじゃありませんよ! 道路を磨くとか、シャワーを偶数回浴びるとか、引っ越しを繰り返すとか…こんなことになったらもう…ほんと、破滅だ…。なんでそうなっちゃうの!? っていうようなびっくりするような強迫行為ばかりです。

それを読んでいると、こんなに大変な人たちもいるんだ…って、少し気が楽になる思い。
強迫性障害の治療にはみんなで集まって自分の症状についてなどお話しする形態もあるらしいですが、それに近い気分を味わえますね。
強迫性障害ではない人にとっては、これらの事例を読むととてもとても意味不明で奇異な病気に思えることだろうと思いますが、強迫性障害の人が読めば、なるほど…こういう人もいるのか…って、参考になると思います。



シュウォーツさんの方法


四段階方式と名付けられた方法です。なんか四段階のステップ踏む難しい方式なのか?と、名前を見て思ったんですが、実は根幹となる考え方は二つ程度だなと思いました。

まず、強迫性障害の強迫観念と強迫行為は脳の一部分の異常によって起きており、自分の弱さや自分の考え方のために起きているわけではないということを認識すること。
だから、自分はこの不安の言いなりにならないよう意識し、強迫行為の代わりに積極的に別な行動をとること。

ほとんどこれだけ。とてもシンプルです。
儀式的な方法も要しないし、特殊なフォーマットもない。すぐ実践できる。

私は認知行動療法(主にコラム法)の本も買って読んでみた、ちょっと実践してもみたんですが、苦しいばかりであまり効果の実感がありませんでした。
しかし、このシュウォーツさんの方法は四段階方式の二番目くらいまで読んだだけでも、いきなり効果を感じました。読んだだけで。急に不安が少なくなった、と感じました。これは驚きです。コラム法のように面倒なシートに書き込みしたり細かい分析なんかしなくても、ずっと気持ちが楽になった!(※ただし効果は人によって差があると思うので、コラム法のほうが効果がある方もいると思います)

この方法の中で最も大事なのは、その強烈な不安は自分のせいで起きているわけではない、これは自分の体が自然に起こしてしまう錯覚みたいなもんだ。と冷静に受け入れることなんじゃないかと思います。
その冷静な認識だけで、すごく変わるんだ! ということは、この病気は一体何なんだろう? 認識にかかわることなのだろうか?と、新しい疑問が私の中に生じましたが、まあそれはあとで…。
とにかく、この本は、強迫性障害が脳の一部分の動きと関係していることを具体的に一生懸命解説しています。それを読むと、そうか、脳の誤作動のせいか、じゃあ仕方ないし、そしてこの不安は現実ではなかったんだ!と、安心できる気がします。

シュウォーツさんによりますと、この四段階方式を使えば 強迫性障害は、抗うつ剤などの服用なし・または少ない量でもほとんどの人がある程度改善したそうです!! これはすごいことですね。

ただし、この四段階方式には必要な前提があり、それは、「この病気を治したい!」という気持ちだそうです。
アルコールなど各種依存症にも適用できるそうですが、「この病気を治したい!」という気持ちがないと使えないようです。依存症の人は、俺は軽度だから治療は必要ないとか、この病気のままで死んでもかまわない、と考えている人が結構多いようなので、すぐに活用できるとは言えないかもしれません…。



なぜ、認識ひとつで治るのか?


私自身が、この本を読んでから急によくなった実感があり(※個人差があるとおもいますのでご注意ください)、これだけで治るとはどういうことか?と不思議に思いました。
そのヒントはこの本の中にいろいろあると思ったんですが、まず、強迫性障害の原因の一つには脳だけではなくて、完璧主義性格があると思うのです。事例の中の患者さんも、治療の中で「自分が完璧になれないことが分かった」と言っている人が何人かありました。自分はすべてにおいて真剣すぎる性格であると発言している患者さんもありました。たぶん、そういう人は、この障害を「これは自分の弱さの問題であるから、努力でなんとかできる。完璧に努力で克服せねばならない」と思っているのではないだろうか…と思いました。通院を拒否したり、不安や癖を秘密にしていたり、相談をしないようにしていた患者さんも何人か出てきたけど、こういう完璧症だからこそ病的なレベルまで悪化するのではないかと。

ちょっと心配性なだけなら、病気まではいかないんだけど、脳の作りとか性格とか更にはストレスなども相互作用して、ものすごく悪化してしまうんじゃないかと。
だから、それらの相互作用のうち性格の部分をちょっと矯正してやればずっと良くなるのかな~と。
「私の弱さのせいでこんなことになっているんだ、私はなんてダメなやつなんだ…私はもっとしっかり者のはずなのに…」という状態から、「わたしの弱さのせいじゃなくて、生まれながらの仕方のない発作なんだから、とりあえずかわしていこう」と、罪悪感を取り除いてやることで、悪循環から解放されるんじゃないかと。

それから、この本の後半のほうでちらっと書いてあったのですが、「人の意思・意識は脳をコントロールできる」っていうこと。
シュウォーツさんは、認識の仕方と、意思によって、脳の生まれながらの間違った動きがだんだんと治っていくのだとすれば、意識・意思は脳の働きとは別のところにあって脳に影響を与えているはずだということを言っています。
ああ、これは病気で起きているのか、と上から自分の不安を見下ろすことで、それをコントロールできるようになってくる。確かにこれだけで治るのだから、意識はすくなくとも強迫観念などの誤動作よりは上の位置にあるものだといえるように思います。

意識とは何か、脳と意識の関係については、いまだに謎の多い分野だそうですね。脳が作り出す錯覚である、という説も根強いようですね。でも言葉で説得される程度の意識の変化によって強迫神経症の脳の異常な部位が正常に変化するのがきちんとわかっている…ってことは、錯覚や後付け程度の存在ではなさそうに思いました。特に意識がすべての脳の活動に対する後付けのストーリーでしかないのであれば、気の持ちようで脳の状態が修正されていくことはちょっと難しいような気がするなあ。
あるいは脳とは 常に相互作用して、すごい速度で変化したり修正されたりしていくものなのでしょうか? そういうこともあるかもしれませんが。

いや、意識の正体がなんであれ、とにかく意識して気持ちの持ちようだけでよくなるかもしれない、っていうなら、それに越したことないじゃないですか。サイコーじゃないですか。ダメもとでも意識を信じてみようじゃないか! ねえ。



強迫性障害とは何なのか?


脳の中でどのようなことが起きてるのかについてはこの本に書いてありますが、
私としてはこの本を読んで、また自分の体験から考えてみて、強迫性障害の原動力は正体もない説明もつかない「強烈な不安」なんじゃないかと思うのです。この本のタイトルからしてもそんな感じがします。みんな自覚症状にはとにかく不安があるのではないでしょうか。

外から見ると、強迫性障害はとても理解不能で、論理的思考によって強迫観念を説き伏せることで解決できそうに思える。私も他人の強迫性障害についてそのような方法で説き伏せて治せると思っていたくらいです。ばい菌なんて手洗いしても取れないしどこにでもいるし、いても害はないしむしろ我々は菌と共生している…などなど、説得しました…
でもこれは間違いだったようです。強烈な不安そのものが起きる限りは、瞬時によくなることはない!

しかも その強烈な不安というのは、身動きが取れなくなるくらいの劇的なもので、恐怖症の人の恐怖感と似たような、痺れるかのような、まるで激痛のようなものなのです。手を洗わなくてもばい菌なんてどこにでもいると説明しても、その激痛のような不安はそのままそこにあるのです。だから、強迫観念が間違ってることを頭で理解したとしても行動を直せない。あまりに強すぎる不安によって、すべてが縛られてしまう。

この本に、「強迫観念と戦うな」ってありました。強迫観念は相手にしても特に意味がない、表層の張りぼてみたいなもんで、その中身はただ、強い不安なんだと思います。

「強迫観念は相手にせずに、しかし強迫行為は断固拒否しよう」とのこと。
強迫行為を繰り返すと悪化するのだそうです。逆に強迫行為をしないで、この不安は脳の誤作動のせい…って考えて、別な行動を15分ほど行ってると多少不安が薄れるのだそうですよ。これを繰り返すとどんどん不安が薄れてくるそうです。

強迫性障害を患っていない方、理解不能だと思っている方は、居ても立っても居られないほどの激痛のような不安が たびたび襲ってくる状況を想像してみてください。 出かけるとき・仕事の時・ご飯の時…など、いろんなときにそれが襲ってきて、手洗いするとちょっと良くなった気がするのなら、それが病気であると自覚しない限りはとりあえず手洗いをしてしまうのではないでしょうか…



思ったことをとりとめなくいろいろ書いてしまいましたが…
強迫性障害で悩んでいる方、強迫行為がなくても、不安のために毎日がなんだか苦しい方は、試しに読んでみる価値がある本だと思います。
お医者さんの助けなしで自分だけでも実行できる方法だし、薬もあまり使わずによくなると書いてあるので、病院に行くのはためらわれるという方も、病院に一回行った分のお金と思えば買って読むのはありじゃないでしょうか…。

私は、 この本買ってよかった~!!と思いました!!




不安でたまらない人たちへ―やっかいで病的な癖を治す
ジェフリー・M. シュウォーツ



ところで強迫性障害の人は人口あたり1~2%と言われているそうです。私は、もっと多いんじゃないのかな…と思っています。私の同級生の友人もOCDなのです。これだけ身近にいると、診断されない人が多いだけなんじゃないかと思います。私も友人もOCDであると診断されたわけではないですから…。でも友人は自他ともに認める手洗いの強迫性障害です。ほかにも不潔の強迫観念を持っているお友達もいたので…やっぱ結構多いと思うな。

ちなみに私は祖母が強迫性障害(確認)のようですので、やはり遺伝があるっぽいなあ?と思っています。
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