[感想]街道をゆく (2) 韓のくに紀行(朝日文芸文庫)



街道をゆく (2) 韓のくに紀行
司馬 遼太郎



ふと、
そうだ、街道をゆくが読みたかったんだ、と、思ったので、近所のブックオフでゲットしてきました。
それがまた、たまたま売ってたのがこの韓国紀行で、とても面白かったです。






なぜ読みたかったのかわからない、でも面白い


司馬遼太郎さんは、最後の将軍をふっと読んだだけであとは何も読んだことがない。あの文庫の後ろにこんな本もあると載ってたのをみて気になったのかどうか、何も覚えてないんですが、とにかく、街道をゆくを読みたかったんだ、と思った…不思議です。
そんで、この韓国編がこれまたほんとに面白くって、うおおおっおもしれー!って読みました。
もともと、旅行とか海外の話とかそういうの好きだから、私好みのシリーズなのかもしれません。

読んでみて初めて知ったんですが、司馬さんの好奇心に従って歴史の痕跡を追いながらの旅行記なんですね。
この韓国紀行は、韓国に日本人のルーツと痕跡を求める旅でした。
ただの観光旅行記とは全く違い、海外からの観光客がそんな辺鄙な所行ってどうするんです?と言われながら、遠く車を走らせて田舎に行ったり、観光名所や名物をスルーして、遠い昔の記録に思い馳せたりしています。
歴史さっぱりな私なので、知らなかった~なことだらけで実に面白かったです。



司馬さんの歴史観


Amazonでレビュー読んだら、「~だったに違いない」とか「~だったであろう」とか想像でものを書いてあることばっかりだ、という批判も少々ありましたが(たしかにそうなんですよ!)、私は気になりませんでした。や、もともと歴史をほんとに知らない私だからってのもあるんですけども、むしろ、歴史というのは…史実というのは、あっという間にわからなくなるもの、遠い昔ならなおさら、どんなに調べても想像を含めないと分からないものだと思っているこの頃なのです。資料が多く残ってそうな近代史だって、完全な真実を目の当たりにすることはできない。むしろ今現在そのものだって、多くの人の織りなす歴史の瞬間をすべて知ることはできない。一つの出来事の裏側にあるあらゆる要因と関係、一人の人の心の動きと行動でさえ、完全に記録することなんかできない。

歴史というのは、むしろ想像力があってはじめて作られる、ストーリーではないか。ある人から見た歴史という物語、それでいいんじゃないかなあ…と思うのです。「科学的(客観的)な歴史学」を追い求める人には怒られそうですが、歴史素人な私には、それでいいかなっと!

だもんで司馬さんの知識・調査そして想像力がまとめ上げる歴史観は、十分面白くて素晴らしいなと、深く思いました。もちろんすべてが正しく、全世界に通用する厳然たる事実とかではないでしょうけど、説得力もあり、そして浪漫もあり。



隣人としての歴史


この韓国編は、韓国と日本のすでに忘れられかけている交流の痕跡を探す旅です。古い文書に残された記録をもとに、ガイドさんも全然知らないような辺鄙なところに行って、司馬さんは日本人の面影や残り香を探します。結局のところ、はっきり残っているものは少なくて、想像で遠い昔のことを感じ取るところが多いんですけどね。

そんな想像と面影の中に、しなやかで幻想的な、上代から続く韓国と日本の関係が浮かび上がっていきます。司馬さんは戦時中に実際兵士として韓国に行った経験のある方だし、戦後司馬さんの当時も、また今も続く韓国と日本の難しい関係、切ない問題もあり。でもそんなの物ともしないようなゆるやかで広大な、遠くから続く歴史の流れ。それを感じて司馬さんは感動している、その感動が伝わってきます。

韓国の田舎に行ってみたら、突然に目の前にタイムスリップしたかのような上代の人々の暮らしが現れる。悠久の時の中の日本人と韓国人の関係が自分の身にはっきり感じられて、司馬さんは涙をこぼしてしまいそうになる。私も読んでて涙が出ました。
なんだかんだの地理やら政治や戦争やらの力学を超えて、ただ「遠い昔からの隣人だ」という、シンプルな事実がじんわりと浸透してくる。

クールに語りながら、とても感動的な韓国紀行です。


あと、意外にも、笑えます。


超有能旅行ガイドさん、ミセス・イムとのやりとりは面白さが爆発です。っていうか、わたしどうしても、このミセス・イムみたいな人知ってる、絶対に知っている!ありありと思い描けるぞ!?んんんんーーーー!?!?!ってなりまして、でも誰なのかどうしても思い出せん…。韓国人の方で二人くらいは知り合いの方がいたけど、その人でもないし…分からん~。わかんないけどほんとに声が聞こえるってくらい、知っている気がしてならないんですよね。とにかくミセス・イムはめちゃめちゃ個性的で面白いです!! 後半は比較的出番少なく…もっと出てきてほしかったくらい(笑)

それから、従軍して韓国に行った時の思い出が語られるところがありますが、それがまたユニークで…戦車について観察したところの下りは、吹き出してしまいました。 戦争は大変なことだったろうし、実際に軍人として行ったというのに司馬さんの視点はとても客観的。皮肉でもあるけど笑ってしまいさえする。とても興味深く、印象的でした。実際に行った人にも、いや実際に行った人にこそ、様々な視点があるんだよなあと……証言できる人が減ってきた今こそ、色んな意見を客観的に見たいものだと改めて思いました。


さすがは有名な


私、日本の現代の作家さんの本はほぼ全然読まないので、有名な司馬遼太郎さんといえども読んでこなかったんですが、これを読んで、司馬さんの本をもっと読みたいなと思いました。キリッとした男らしい文章、それでいて、ユーモアもあり歴史ロマンもあり、突き放したように書くくせに人情味があり、かっこいいですねえ。今後、小説ももうちょい読んでみようと思います。

街道をゆくシリーズは、もっと読みたいと思ったんですが、古本屋さん探してもなっかなか売ってないんですね…人気か!やはり人気か~!!




街道をゆく (2) 韓のくに紀行
司馬 遼太郎

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