[感想]異世界食堂 - 犬塚惇平



異世界食堂
犬塚惇平 (著), エナミカツミ (イラスト)



「小説家になろう」というウェブ小説投稿サイトで連載されている小説です。

エルフやドワーフなどファンタジーの住人たちが不思議な扉を通って7日に1日だけ、地球の…日本の…とある洋食店を訪れることが出来てしまい、元の世界では味わえないような素敵洋食を食べて、人生の素晴らしきひとときを過ごして帰っていく…そんな一話完結型の、小さくて素敵でそして美味しそうぅぅおおおな物語です。

書籍化、漫画化、そしてアニメ化までされたようですね、おめでとうございます!
私も少し前にハマり始めたクチなのですが、ほんとに素敵な小説なんですよ…
グルメものというだけではなくてね、すごく癒やされる独特の雰囲気を持っている作品です。






私なんでこの作品を読むことになったのか、ちょっと前に、詳細は忘れたんですが、多分何か食べ物を検索してたら出てきて、ふっと見てみたんですね。そしたらあれまあ、なんて素敵な小説が…ネットにタダで!? となりまして。そこで「小説家になろう」というサイトのことを知った次第なのです。

もうね、もったいなくて、全部読み終わりたくない!もったいない!なので、あんまり急がないで読んでおります。ちびちびやらかすくらいがいいと思って。大事な金平糖みたいに、一個ずつ楽しみたい…。
作者さん、ほんとに綺麗な小説をありがとうございます。

ちなみに私はこれ読んでて一番食べたくなったのは、
シーフードフライ
であります!! 食べたいぁぁ揚げたての、新鮮な、高品質の、シーフードフライ食べたいあああ
そんなの出す店無いよお近所にはないよおお。とんかつじゃなくてシーフードフライがいいのおおお



静かな魅力、洋食のノスタルジー


私は…いわゆるウェブ小説はあんまり読んだことなくてですね…まあ、ラノベも比較的読まない方でですね…日本の現代小説は読まない方でですね…
という私ですが、ドラクエ育ちですから、ファンタジーは好きです。海外のファンタジー文学などは大好きです。
「小説家になろう」という小説投稿サイトでは、この現実世界の人が異世界に行ったり異世界と交流したりというジャンルの作品がかなり多数在るようで、いや、ありすぎじゃないの?ってくらい異世界ものにあふれているようで、この作品もそういった作品の一つと言っていいのだと思います。

が、この作品の静けさは、「異世界に行っちゃった」系とは大きく一線を画していると思うんだな!

お店は日本にあって別に動きはしません。異世界から、誰かがご飯を食べに来るだけです。
異世界の人も店の主人も、静かにそれぞれの世界での日常を送っている。いつもの日々がある。毎日の仕事や暮らしや、夢や目標や過去がある。

訪れる異世界人は、そんな日常に稀に訪れる、異世界食堂での素晴らしい食事を日々の暮らしのささやかな楽しみにしている。こっそり一人で食べに行ったり、大切な人とだけ食べに行ったり、仲間と楽しんだり、でもみんなには教えないの。こんな美味しい店をみんなに知られたら大変なことになっちゃうからね。それに異世界に来れる扉の使用回数には限りがあるので、誰かに知られたら自分がいけなくなるからね。
お気に入りの隠れ家レストランへ、こっそり訪れる、ささやかなハレの日…

店主は毎日は普通の洋食店として店を運営しているけど、週に一度だけ、異世界の人たちに店を開ける。それも普段通りに、気負わず、いつもどおりに、でもお客さんに喜んでもらうため、人間でも異世界人でも関係なく、洋食を出すのです。

メニューはフレンチでもなけりゃあ和食でもなく、気負ったものもなく、昭和の洋食店な品揃えなんだけど、そこにノスタルジーがあるんですねえ。別に特別グルメ小説ってわけじゃなく、こんな料理が…とか、この味わいは…とかグルメウンチクとか、そういうのに特化してるわけじゃない。でも読んだら、ああ、そうだよねえ、洋食ってさ、おいしいよねえ……、と懐かしいような気持ちになるのです。オムライスとか、メンチカツとか、グラタンとか、ねえ…。

そんなどこか懐かしく静かな洋食店へ訪れる物語です。


当たり前のようにそこにある異世界の人生


素晴らしいと毎回思うのは、いつもいろんな異世界の種族がやってくるわけですが、彼らそれぞれの暮らしや思想が短い中にすっと想像できるように、書きすぎず、過不足なく、静かに描かれているところです。
彼らの暮らしと物語があって、そしてそこに異世界食堂での食事があって、その食事が終わってまた彼らは自分の暮らしへ戻っていく。描かれているのは、実は美味しい料理のことじゃなくて彼らのその暮らし・人生の素晴らしさなんですよね。たまに美味しいものを食べたりして感動したりして、癒やされたりしながら、思い新たにしたり、恋をしたりしながら、それからも異世界食堂の外で続いていく人生のことなんです。

たまに前に登場したキャラが出てきたりもするけど基本的に毎回新しい人物で、毎回彼らの人生が垣間見えるのです。そんで彼らの世界は異世界ですから、人間じゃない人たちの人生はいろいろやっぱり違うんですよね。そこらが確かにファンタジックで、竜が出てきたり、小さな妖精だったり、獣人だったりとかするのですけど、彼らには彼らなりの暮らしや思想があって、それがまた、なんかいいなあ、そういう感じで暮らしてるんだなあ…って、違和感なく入ってくるんだ。やたら説明しすぎたり、複雑になりすぎたりせず、アタリマエのこととしてすっと入ってくるこの描写…見事です。
作者さんがしっかり自分の中で噛み砕いているか、すっかり没入して書いているか、とにかく一体化してないとこの自然さは感じられないと思う。

特殊な表現があるわけではなく、技術が優れているとかでもない、正直言えば凡庸な文体なのだけど、読みやすくて、すっと入ってくるこの感じ。こういうのがほんとの巧さなのかもしれないなあ、と思いました。
そして作者さんの心の静かで優しい感じが伝わってきてるんだなって思うのです。


大きく動く物語や、燦然と輝くキャラクターが居るわけでもない、とても静かで小さい物語だから、感想を書いても魅力が全然伝わらないとは思うんですが、まあとにかく、ちょっとティータイムにでもおひとつつまんでみて欲しい。お茶菓子代わりにつまんでみて欲しい。とても素敵な小品だから。

「小説家になろう」のサイトでは無料で読むことが出来ますので、ぜひ!

異世界食堂 | 小説家になろう
http://ncode.syosetu.com/n1701bm/







小説家になろうの小説を読んで、改めて気付かされたには、やっぱり小説なり、漫画なり創作物には、作った人の心そのものが表れてて、それを我々は感じて、共感したり、好きだと感じたり暖かいと感じたりしてるんだなってこと。
書いてる人がいい人で、暖かい人だと、読んでてそれだけであったかい気持ちになるんだなあ。
書いてる人が、どうしても悩んでて解決したいと思ってることが繰り返し小説に表れて、その人なりの解決策を示してくれているんだよねえ。
ショパンがショパンであるように、作家はいつも同じものを描いている、そういう宿命にあるんだよなあ。
改めてそう思って、楽しい気持ち、明るい気持ち、あったかい気持ち、力強い気持ち、感動する気持ちにしてくれる作家さんに改めて感謝したい…そう感じています。



異世界食堂
犬塚惇平 (著), エナミカツミ (イラスト)







ついでに、ほかに読んでる作品


「小説家になろう」には、他にも素晴らしい小説がたくさんあるんだろうな。と思うんだけどあまりにも膨大な量の小説が在るみたいで、しかもタイトルがどれもこれも異世界とか転生とか似たような語句が入ってて…探しようがない絶望を感じてる(笑)
レビューサイトさんなどがおすすめしてるのを見てさえ、膨大で、選びようがない~~という気分です…。
小説もね、合う合わないってのがあるからね、読んでみるしか無いよねえ。

そんな中で今読んでて、面白いなあと思ってるのは、こちら↓



<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 1.可能性の始まり (HJ文庫)
海道 左近



<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- | 小説家になろう
http://ncode.syosetu.com/n5455cx/



不思議なMMORPGの中での冒険の物語…ってそういうのも結構最近多いよね~とか思いつつ読んだのでしたが、いやこれまたなんともいえず、いろんな魅力のある作品。これも多分、作者さんのこころの魅力がこっちに伝わってくるからいい作品になってるんだろうなと感じています。
まだゆっくり読んでるので、もう少し読んで、気が向いたら感想を書こうかなと思います。
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