[感想]シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険―ワトスン博士の未発表手記による (扶桑社ミステリー)

4594002781シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険―ワトスン博士の未発表手記による (扶桑社ミステリー)
ニコラス・メイヤー 田中 融二
扶桑社 1988-05

by G-Tools



鉄は熱いうちに打てです。さっき読み終わったので早速感想です!
まだ正典を全部読み終わっていないというのにパスティーシュを読んでしまってどうもすいません。
いや、でもこれは、ほんとに萌える内容だったので、
読む手を止めることができなかったのですよ‥。

「本物らしさ」はまあまあで、あんまり気になりませんでした
でも正直そんなことはまったくどうでも良くなるほどの
驚きの設定で萌える展開でぶっ飛ばしてくれました(笑)

ある意味大空白時代を取り扱った内容ですが、
正典補足的な想像ではなく、大胆なフィクションです。
あえて申しますとホームズ萌専用です(笑)






概要


あまそんなどのレビューを見ても、概説を見てもいずれにしてもネタバレる。
タイトル的には、わかりにくいタイトルが付いているのに、説明しようとするとネタバレる。
もしも一切のネタバレが嫌なら概説を読まないほうがいいですが、読んでも魅力が損なわれることはなかったなあ、と思いました。
ホームズ萌的にはあまりにおいしい設定だったため(笑)

ネタバレを抑えて言えば、
大空白時代は最後の事件~空家の冒険で語られたような内容ではなかったのだ‥という説が、ワトソンくんによる真実の暴露というかたちで描かれています。そこにはホームズの「例の悪癖」が関係していた。また、この冒険には とある実在の現代においても伝説的に有名な人物が深く関係してきます。
推理モノというよりは、キャラクター(特にホームズ自身の個性)にスポットを当てており、展開もタイトル通りに「冒険」です。

文体は当然真似てあり、そんなに違和感はありません。ただ、パスティーシュというのはこういうものなんだろうねえと思うところは、正典の引用が意図的なことと、編者による(とされる)研究解説注釈が脇の方に出てくる(読もうと思わなきゃじゃまにならない)ところと、時代・背景の描写がワトソンさんにしてはやや冗長なところ、あとは微妙に‥ホームズの言動が少しだけ、ちょっとだけ、なんかちがうかな?と思う時があるところです。
しかし、こういうもんだと思えば解説類は気になりません。ホームズの言動は、この話が特殊な状況下のストーリーだからということでごまかすこともできるし、それどころじゃないのであんまり気になりませんでした個人的には。

ホームズ萌えの人、友情萌えの人は、損はしないと思いますよ!
推理が目当ての人にはそれほどおすすめではないです。






以下ネタバレ感想









萌える設定すぎて


もうね、読む前からね、どんな設定か見ただけで、なんだとおおおなんて萌える設定なんだ素晴らしい!!私好みすぎてやばい!萌えるしかない!!!という感じでした。だから絶対買おうと思った。
たまたまRK天ポイントが余っていて期限切れそうだったから正典読み終わってないけど注文しちゃった。そして、つい読み始めてみたらもう止まりませんでした(笑)

当時たいそう売れたそうですね。随分昔の本のようですが。しょせん、みんな同じポイントに萌えてるんだ、けっきょく、世の中みんなホームズ萌なんだと思う。私がホームズのこの部分が萌える!というところはやはり皆共通に違いない。え、ちがう?

まあとにかくね、前々から、ヤク中なホームズは危険で魅力的だと思ってやみませんでしたが、それですっかり参ってしまうとかもう、それだけで萌えるわけですよ。前も書いたけど、ホームズがダメダメでしょんぼりでぐったりとかそれだけで萌える。むしろそれが萌える。 そういえば私は立派な主人公が精神的に完全ダウンという展開は前から好きですが(笑)、それにしてもホームズほどの人が、感情を否定する人が、精神的に参るというのはほとんどありえない展開ですよね、そこを見事に突いてきてくれるではありませんか!いや、ホームズを参らせるために設定されたのではなく、ホームズの依存症という元々の設定を進展させただけなんだろうけども。


泣いた、友情に


第1部はワトソンさんの不安と絶望と恐怖と悲しみに支配されていて、落ち着かない気分になりっぱなしでホームズを見守ります。本当に読んでいて、嫌なドキドキが自分のもののように続きました。萌える展開なのでときめいてた部分もありつつ、暗い気持ちになって、心配で辛くて、不安で不安でという気持ちに強く感情移入して、ある意味とても素敵な読書体験でした。いつも見知った大切な友人の精神がおかしいってのは、ほんとに嫌な、心のなかの組み木がズレたような嫌な、奇妙な、気色の悪い感じがしてね、これがなんというか、読書だからこそだけど、たまらない面白さと感じる。

ワトソンさんの献身と愛情にはもう、泣けてきます本当に泣きました。最初にメアリーに相談するところで泣きました、深刻な、悲壮な決意、彼を見捨てたら人間のクズだとまで言い放ち、金を湯水のように使うと宣言するワトソンさんに。平均的で常識的なワトソンさんが、特に後者の宣言をするのはそうとうの覚悟なんだろう。家族を崩壊させるかもしれないという意味で言っているんだろう。しかし彼を見捨てれば人間のクズに成り下がるほどの、彼からの恩とはなんだろう? いつも迷惑かけられっぱなしのような気がするんだけどな(笑) いや、ワトソンとメアリーという家族を考えれば、大きな恩はあるだろうけど、ワトソンさん単体への恩とは‥。すでに多くの作品を出版して名声を得ていたからかな。まあそんなことはどうでもいいことだった。

ホームズの嗅覚を騙して誘導する冒険は、読んでいても非常に罪悪感を感じました。そして罠にはめられているホームズに、異様なものをみるような気持ち悪さを感じた、あ、これはいい意味です。おそらくワトソンさんが感じる気持ちを、感じました。ひきこまれて感情移入しました。あと、そう、萌えたのは、補給しに行くホームズが後ろめたそうだというところね‥ものすごく胸が痛みました。
マイクロフトはわりとちょい役でしたね。もう少し活躍するのかなと思っていましたが、まあ全然構わないけど。

そんでさあ 何が萌えるって、禁断症状で我を失ったホームズですよ‥。あの完璧で、それゆえにおかしなところのある計算ずくのホームズが我を失って叫んだり暴れたりするなんて萌えざるを得ないです。その後の廃人状態も良かったです。とにかくよかったです。ホームズ萌的になんというフルコース。なんというごちそう。ほんとに私好み満載で、ほんとありがとうございます!!!!書いてくださってありがとうございます!私の望みを形にしてくださって!というほどでした。

酷い状態の最後で死にそうになりながらワトソンさんに赦しを求めるホームズの哀れさと言ったらもう‥
もう‥‥泣きました、きっちり泣かせていただきました、噛み締めてじっくり泣きました。ホームズが可哀想過ぎて、哀れすぎて、愛しすぎて辛すぎて泣けました。信じがたいほどにおいしい‥絶対原作ではやれないだろう、という、パスティーシュでしかできないであろう、まったくもって至福の展開でした。もうこの部分は語りまくりたいほどにですね、ときめきますね、それまでに浴びせられた罵詈雑言とワトソンさんの気持ちの辛さも萌えるところです。あんな悪態を操れるとは‥と書いてあったけど、そこも掘り下げたい萌え。とどまるところを知らない萌えなのでこの程度にしておこう‥さすがにパスティーシュで、あまり逐一考察して萌えまくるのもね、あれですよね‥でもほんとにおいしかった

ちなみに感情移入しすぎてか、読んでいるうちに自分も病気になった気がしてきたよ


音楽を愛する


ヴァイオリンの演奏のところ、なんと!!なんとあますところなくホームズの萌える部分をきちんと使ってくれるんだろうか!と思いました。演奏するホームズの微笑に、不安と希望と喜びで釘付けになっているワトソンさんがなんとも‥気持ちがわかるよ‥‥。ホームズの演奏する曲はタイトルがきちんと述べられているものは正典にはなさそうな感じがしますけど、ここではちゃんと曲名が(実在の有名曲)挙げられており、妄想‥もとい想像してたのしめるおいしさがまたありました!おいしいです。

意外とヴァイオリンのことは、私はホームズの音楽好きのところが大好きなんですけど、比較的持ちだされなそうな部分なのに、最初の鞄の中身のところから、とても注目して描かれていて嬉しかったです。とりだす仕草などにも非常に愛情があふれていて、彼のヴァイオリン好きについて著者もとても思い入れがあったのではないかと、思います。

その後のワーグナーの歌劇のところも、ホームズの音楽好きをクローズアップしていてとても楽しめました。「ワーグナーの曲が好き」というのは、正典で「ワーグナー」とまで言及されていないんじゃないかなと思うけども(後でわかったけど赤い輪でワーグナーを聞きに行こうと言及されていました、特に好きとは言ってないけど聞きたいとは思ってるので好きなんだろうね)なんだか実にありそうな。ありそうな。そしてワトソンさんが大っ嫌いと言ってるのも実にありそうな(笑)ニヤニヤしました。
あ。夜会服をしつらえ~‥というのは なんですか萌え罠ですね?




事件と推理と冒険


推理は、私は、あんまり興味ないので(笑)どうでもい‥
事件のあらましも、犯人像も、ここのところはなぜだろうか、ドイルさんの正典と比べると全然愛情がわかない。むしろドイルさんの作品をよむと感じる犯人像に対する興味のほうが不思議な気がしているので、やはりパスティーシュではここは期待してはいけないところなんだろうなと思いを新たにしたのみ。ただ、時代背景をからめるというパスティーシュのお約束??なのかは知りませんが、やたらと大規模の事件にしてしまうのはあまり好きじゃない。時代背景的にありそうな正当の流れとしてもこの手のテーマはあんまりぴんとこない。

事件の中心となる被害者像は、ホームズものには本来ありそうもない現代的な個性と設定でそこも多少違和感がありましたけど、映像化するにはとってもよさげなかんじですね。

で、終盤の激しい追跡劇は、四つの署名と似た印象でしたが、それよりもかなり大規模でドハデで猛スピードで大重量で痛快でした。いろいろの苦労あせだくな感じも読んでいて手に汗握りました。特にね、客車破壊の件は笑えた。来るとき瞑想的に眺めたあの窓と似たような窓を今は破壊‥っていう件は、すばらしいユーモアで吹いた。ガツガツした破壊ぶりがほんと、大変なところなのに笑いのツボに入りました。

決闘シーンは、いろいろとご都合感(サーベル対決や、事故死)がありましたが、派手で、まあ、良かったと思いました。



そして彼の過去


いやーしてやられたと思いました。このためにフロイトさんを取り扱ったのか?と。
これを言わせたいがためだけにフロイトさんを。
ねえ、そうなんだろ?そうなんだろ!
たしかにこうでもしないと、こうでもならないと、彼の過去は彼の口から語られることなど、ありえないだろうと思う。そして、どうしても、どうしても我々ホームズ萌え的にはホームズの人物を分析しそれらしい過去の理由から構築したいという気持ちが湧いてきてとめどなく湧き上がり、どうしようもないのだあああ!!
描かれた悲劇のヒーロー像、哀しく美しい正義のヒーロー像は、これまた萌えな内容でした。著者さんが発案したわけではないとのことでしたけども、美味しい設定と‥言わざるをえないですね。
たしかにその設定だとけっこうホームズの変な性格を説明することが可能かもしれない。
でもやっぱこの設定はドイルさんの中にありそうもないような気がして仕方ないので私的には、完全に支持する気には到底なれないのだけど、でも、非常に美味しい、アンチヒーローにありそうな設定でした。アメリカのドラマとかにありそうなかんじでした。おいしいです
でも、その過去によってモリアーティ教授についてを説明しきってしまうのは、感心しました、すばらしいです。そういう辛い、割り切れないこだわりからこうなったと言われるとさあ、誰も責められないし、突飛なこの話の展開にも真実味が与えられて、最初に感じた「なんでそうなった?」っていうのがきちんと解決するんですよ。ここはすばらしいです。
そして、彼の理性によってさえ、どうしても永遠に解決できない純粋な幼くさえもある本当の感情を垣間見た感じがしてね、キュンキュンします。真のホームズを見た、という満足感を与えてくれました。
彼の重荷が下ろされることがあるのか‥いや、何もできない、というワトソンさんとフロイトさんの会話のところがまた、 寂しくて悲しくて孤独で歪んだホームズに誇らしさと同時に胸が痛み、泣けました。

この設定を支持する気はいまのところないけども、そういうような、似たような、割り切れないひどい過去の体験がホームズを形作っているだろうことは感じられるし、そういうホームズがやっぱり大好きです。ただ、具体的には明かされないほうが上品でカッコイイような気はしてしまいます。

なるほどね、女性嫌いのところからそういう設定をね‥。ま、たしかに、女性嫌い以上に恋愛嫌悪感がすごいので、これはなにかあるだろうと思わずには、いられませんけどね、「弊害」と捉えているので、弊害になったことがあるとしか思えませんね。


この真実については序文であらかじめほのめかして書いてあるんだね。あまりそう思わずに、普通に読んで納得してましたけどね、自分に対する虚構だという話。ほんとう、そういう印象を与える人だから。



読み終えて


終わり方もさっぱりすっきり爽やかに大空白時代に向けて、ぐだぐだ言わずに終わっていて、とてもいいなと思いました。
ホームズの奇妙な人柄に興味が無い方はこれを読んでも全然面白くないと思います。これはホームズ萌え専用っていうか(笑) ホームズ萌えなお話を書こうとしたら設定的にこれ以上巧みなものはないのではないかなというほど美味しい題材でした。本人自身の問題を取り扱わないと最大限に本人萌は書けないからね。まさにエースカードでした。

ワトソンさんとの友情もきっちりしっかりがっちりご用意されていて、私は前半だけで十分泣けてごちそうさまだったのですがそれで満足できない人用?に後半にもあって はい、おなかいっぱいです。


おいしいフルコースごちそうさまでした


4594002781シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険―ワトスン博士の未発表手記による (扶桑社ミステリー)
ニコラス・メイヤー 田中 融二
扶桑社 1988-05

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コメント

読みましたー!

大胆びっくり設定で面白かったです。
錯乱したホームズ、全力で救おうとするワトスン、教授の正体、フロイト先生登場、機関車での決闘、そしてホームズの過去。なかなか見どころがいっぱいですね。
ストレートに胸を打つ台詞も多かった気がします。
ホームズ萌えのKMOKさんきっとここ萌えまくってんだろうなーと思いながら(笑)
あ、でもラストはちょっと慌ただしく唐突な感じは受けたかなぁ。

「最後の事件」で真実を強調し過ぎたのはまずかった〜みたいな記述は、うまいなと思いました。

牡蠣のくだりはまた笑ったー(笑)なんかこれツボなんですよね。

>ただ、具体的には明かされないほうが上品でカッコイイような気はしてしまいます。
そうですね〜、簡潔でよかったとは私も思います。十分衝撃受けてるからもういいです。なるほど、つらい!

ホームズ幸せになってほしいよー!愛おしくなりました。

続編も読ませていただきますね^^!

2014/06/04 (Wed) 14:23 | みかん #- | URL | 編集
Re: 読みましたー!

みかんさん>

楽しんでもらえてちょっとホッとしました…大胆な設定ですよね。
私はこれを正典を読み終わる前に、しかも恐怖の谷の前に読んでしまったので
故に、恐怖の谷のワトソンさんの健忘症その他
教授に関する発言にすごい気持ち悪さを覚えてしまったのです(笑)
やっぱりパスティーシュは、正典を全部読み終わってから読め!
ってことですよね自業自得である。

そう、私は萌えまくっていた――Σみかんさまにバレてるううう!!ぐわああ
牡蠣のこともそういうわけで、瀕死の~を読む前に読んだため
元ネタがわからないままだったけどそれでも充分ウケました(笑)

ホームズの過去については、
ほんとに今でもこの設定を思うと複雑な気分です
基本的にこういうツライ設定は大好物なのだけど、
なんか同意しかねるところがありつつ、うーん!!
自分の中で未だにわからん…
いや、わからないものはわからないままで
いいのが本来なんだろうけど、自分なりの過去妄想をいだきたいのに難しい☆

続編は… 期待しないでくださいね~(笑)
ほんとはメイヤーさんのパスティーシュはもう一品あるみたいですが
翻訳されてないみたいですね。でもどうやら私の鬼門方向の話っぽいからもういいや。

2014/06/05 (Thu) 15:39 | KMOK #WlAMjTRI | URL | 編集

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