[感想]競技場バザー - ドイル傑作選〈1〉ミステリー篇

4881357387ドイル傑作選〈1〉ミステリー篇
アーサー・コナン ドイル 北原 尚彦
翔泳社 1999-12

by G-Tools


競技場バザー


解説によると、本文のワトソンさんがしようとしていることそのもののために書かれたお話らしい!
洒落てるし、かわいいし、しかもいちおう最後の事件とバスカヴィルの間に書かれたということで、
そりゃあ、話題になるだろなあ!






とにかくかわいい


ドイルさんのパロディものはこれとワトソンの推理法修業の二つらしいけど、もっと書いて欲しかったあーというほどかわいい。この二人がくだらない対話してるだけでひたすらかわいいんだからさあ!しかしこうして可愛い話を二本といえ読めるこの幸福に感謝!
当時でさえ話題になったというこの作品の経緯をまるごと現代に持ってきたらプレミアついて手に入らないよー!状態になってたにちがいない。こうして安価に読めるなんてラッキー!


我が友は朝食を食べつつ、コーヒーポットに立てかけた新聞に完全に没頭していた
ホームズがご飯食べてるだけで萌える私でどうもすいません。ホームズは食事というと、冷菜を急いでかっこんでいるシーンが多いのでそういうお行儀が悪い感じのイメージがあります。そういうところがすごい好き。でもほんとはマナーとかもきちんと身につけている人なんだよね。たまに良いレストランに行ってたりするよね。意外とグルメらしいという分析を読んだこともあるけど、このひどいだらしない生活ぶりとグルメというのはこれまた結びつかない感じがします。食べなくてもいいや、とか、適当にかっこめ!とかなのにグルメ…。あ、でもそういえば新しいコックの卵の茹で加減が茹で過ぎで固くてヤダ、ワトソンくん全部食べてとか言ってたような…(意訳すぎるか)。食べるのが嫌いというわけではないのだろうな、美味しいワイン好きだし。なんだか分からない人物だよな~やっぱり。美食もマナーも技術として演技的な身につけているのではないか、という気もするし、一方で芸術が大好きだからその一環でもありそうな。
で、このシーンでは朝ごはんを食べながら新聞読んでてやっぱりだらしない感じがいい!っていうかちゃんと朝ごはん食べてるなんて珍しいですね。

頭を使った発言をしたつもりの時に見せる半ば面白がっているような、半ば問いただすような表情
ふふん!っていう自慢げなホームズがかわいい。なんだかんだでやっぱワトソンくんをびっくりさせることに、平和な生活の生きがいを見出している。

スリッパを取り、そこからシャグ煙草をすくって
相変わらずスリッパ…。なぜスリッパ…全然意味がわからなかったけどホントにスリッパなんだよね…。いまさらですけどなぜスリッパ…。変なところが多いホームズとはいえ、スリッパは特にどうかしているので、理由が知りたい。何か理由があると思う。なんか面白いきっかけとか。

君が気を悪くすることはないと信じてるが、…令嬢が社交界デビューをする際には、付き添い夫人を不器量なのにしたがるって
悪くするよ、何いってんの悪くするって。いつもビミョウにそうやってワトソンさんをバカにして楽しんでるけど、さすがに今回は酷い喩えだった…。

それにもかかわらず、彼の発言にはかちんときた
さすがの俺も堪忍袋の緒が切れるわ!byワトソンさん。 いつも酷いこと言われても…受け流しているのか…どうなのか、そこがあんまりワトソンさんの文章からは分からない。別に毎回冷静に受け流しているとも言えないと思う。いつもキレながら言い返してたりしてる気がするんだけどな。たまにこう、なにか投げつけてやればいいじゃん。スリッパとか。

実際のところ君は素晴らしい実験材料だよ
これはややウソだなと思う。実験しているというよりは、ワトソンさんの反応が楽しいほうが勝ってる。ただ、観察するのもそれなりに楽しいのも事実だろうけど、ワトソンさんを使って練習や実験をしてるってほどヒマでもないし、技量が低いわけでもないでしょう。ワトソンくんの反応が楽しいからだよ!というと様にならないから言ってるだけ、と思う(妄想) なぜならワトソンさん以外だって実験材料になりうるはずだよ、むしろ次々別の人物で実験したほうが成果が上がるんだからね。

君は決して退屈することがない
毎回新鮮な反応を示してくれる、自分の推理に飽きたような様子をしたりしないでいてくれる…という意味だと思う。そうな~ホームズが一番うれしいところはそこですね。ワトソンさんがうんざりして無反応になったらホームズ的に結構ショックでかいよなあ。うんざりする!!といいつつ怒ってくれるから楽しいんだよなあ。お子様だなホームズは。

君の精神作用は緩慢かもしれないが、曖昧になることはないし、…タイムズの見出し以上に読み取りやすい
ワトソンさんじゃなくても怒ります。緩慢かもっていうのは酷いな。そんなにワトソンさんが緩慢なわけ無い。緩慢だったら面白い伝記なんて書けないよ。こんなひどい言い方から愛情を読み取れなかったらワトソンさんはなんでこんなホームズと一緒にいるのだろうと思うけど、しょっちゅう、ワトソンさんは「ほんとにホームズは自分をひどい扱いしかしない最悪だ」と言ってるよな、ホームズがワトソンさんに向けている深い愛情を本当にわかっていないんだろうか?? そんなことないよね。わかってるから仕方ないなあと許してあげるんだよね?

僕がお人好しゆえ、つい説明をしてしまうものだから
いつものパターンですが、たしかに説明しなかったことがない。最後の最後まで説明しないほうがたしかに偉大な魔法使いらしく神秘的になりうる。
まあ、説明しないと小説にならない事情があるけどね!

クリケット・クラブにかかわる僕のわずかな経験からして、
推理法修業ではクリケットの試合結果に興味があったのに、この言い方は謙遜?実際にクラブの会計を覗いたことがないからっていうことかなあ?と、気になった。一方でわずかな経験はあるらしい。経験というからには経験が?大学でちょっとだけ応援で事務を…とか妄想したくなってきたけどそんな具体的なあれではないよね、っていうかホームズが人の面倒を見ることなどできないと思うので事務はないな…ちょっと計算くらいならしてあげるだろうけど、選手のお世話などできるはずもない。なんでもできるので、選手として応援出場したことがあるとかなら理解できるかも。

その言葉に、彼はむっとした様子だった
むっとするホームズ!!かわいい!!そんなに、ワトソン君に言い負かされてむっとするシーンってないよね?ほとんどの場合減らず口で切り返したり話をそらしたりしてしまうのに、むっとしているなんて…かわ…。私の中のホームズの様々な表情イメージの中にこのむっとするホームズは燦然と輝く存在となった!ほんとは子供っぽい性格なので、ワトソンさんに拗ねたようにむっとする表情がすごいしっくりくると思うんですよ!
私のイメージの中ではホームズは基本的には微笑です。一人の時や考えるときは無表情だろうけど、人の前では微笑です。ワトソンくんの前では、イタズラっぽいニヤニヤ顔をしたり、皮肉なイヤミな顔をしたり、すねてみたり、うんざりしてみたり、つまんなそうにしてみたり、そして気取った素晴らしい笑顔をしてみたり、あるいは不吉な哄笑や、頻繁にくすくすとバカにしたように笑ったり、すごい表情豊かなイメージなんですよね。でも多分一人にしておくと、全然そんな表情豊かなこともなく、完全に無表情か、時折ちょっとだけ寂しそうにしているだけだと思う。とにかくホームズは、感情を表さないって書いてあるのに、私の中ではいろんな顔をしてるなあと思う。しかしでは感情的なのかというと全くそうではなくて、その表情に表れる感情はほぼ全部演技なんだろう。でもその演技が完璧ではない感じが文章から伝わってくるところがいいんですよ。自分の感情を否定しすぎて不器用になっているところが伝わってくるから、仕方ない人だなあと愛しくなるところがホームズの魅力なんだよなあ。自分を完全にコントロールできていない。自制心で無理やりコントロールしているだけで、それが不器用なんだね。もっとスマートに、必要なときには自分の感情を表に出せるような演技派ならいいんだろうけど、ホームズの場合は「感情が必要なときなんてない!」で全部縛り付けているつもりで、たまにポロっと出てしまっているのに自分でも全然気づいてない、そういうダメなところがいいのです。そして人のせいにしてる。僕が孤独なのはワトソンくんのせいだ!

今の出来事がその一文のうってつけの題材となる、と君は既に心を決めている
悔しいからって更に推理してあくまでワトソンさんを感心させようとする大人気ないホームズがかわいい。別にそんなの普通だね、むしろ誰だってわかるくらい明らかさ!と言って反論する大人げないワトソンさんも最高にかわいい。この二人はほんとに仲良しだけど、こうやってビミョウに言い合いしてるとなおかわいい。ホームズはあくまでも自分がワトソンくんをからかう優位な立場にあると思ってるんだろうけど、ワトソンさんはワトソンさんで、ホームズはホントしっかたないやつだな!と上から目線だと良いとおもいます。

君さえよければ、この非常に興味をそそられる記事に戻らせてもらおうか
なんの記事かと思ったらヴァイオリンの研究的な記事に夢中なホームズに萌えるところですよねここは。事件の記事とかじゃないところがすごく日常風景でほっこりする。ホームズって、思えば、なんでもかんでも趣味といったら研究というアプローチで接してるんだよなあ。学術的なアプローチで。単に好きだ―!というよりは、分析→研究→実験→ワーイ!やったぞー!→論文→完成なのですね。でも音楽鑑賞は純粋に楽しんでいる様子がうかがえたので、音楽だけはほんとに好きなのかもなあ。大学の頃…どんな学生だったのでしょうね。やっぱり訳の分からない研究に没頭してたんだろうね…。問答無用で化学室を占領。 



ホームズが好きか嫌いか


解説を読んだら、この競技場バザーを読むと(ホームズに嫌気が差していた)ドイルさんがホームズを好意的に捉えてるんじゃないかっていう感じがするとか書いてあったんですけども。私は、小説なんて、嫌いなキャラクターを書き続ける事はできないと思います。っていうか、自分で小説で書いたキャラクターを嫌いになれるはずもない、嫌いな人物なんてあろうか? どんなに悪人で最悪のやつだって、自分が書く限りは自分の分身なのです。自分の想像の範囲に収まる限り自分の一部なのです。たとえ嫌いでもやっぱり嫌いになれないと思うんです。
特にホームズは、ちょっと精神的にしょうもないやつではありますが、ホントは心優しくてなんでもできて大活躍する主人公だもの。そんな主人公を嫌いで書き続けられるはずはないです。好きじゃなきゃムリだ。

しかし最初に感じたように、やっぱりホームズにはモデルがいて、そのモデルの人物のことをドイルさんが深く尊敬していたのだろうなということもやはり強く感じます。ワトソンさんがなぜホームズをそんなに尊敬するのか。酷いこと言われまくってバカにされまくって、僕のことなんかどうでもいいと思ってるんだろ!とか思ったりもするくらいなのにホームズを見捨てず、全然ほめられずにむしろけなされるのに伝記を書き続けるのはなぜなのか。ワトソンさんとホームズが同じお医者さんだったらそういう深い尊敬もあるだろうけど、犯罪世界と全然関係がなさそうな真面目なワトソンさんがそこまでホームズを深く深く尊敬しているのは、やっぱりドイルさんがホームズのモデルで恩師のベルさんを大変尊敬していた気持ちのあらわれだと思う。

私がもしホームズとワトソンさんを普通に書いたら、ワトソンさんはもっとホームズに文句たらたらで、喧嘩ばっかりしてると思う(笑)そりゃスゴイなとは思うけど、すごい部分以外ほんとダメだし素直じゃないしイヤなことばっかり言うんだから、「もーお前には付き合いきれない!お前なんか勝手にしろー!」ってさっさとワトソンさんが出て行っちゃうと思う(笑)で、ホームズも「ふんっ、いいもん、ワトソンくんなんか勝手にしたまえ!君みたいな無能な相棒なんていてもいなくてもちっともかわんないんだからなっ」と言って喧嘩別れしちゃうと思います。  …………まあ、普通に実はやってるんじゃないかと思うんだが。伝記に書いてないだけでホントはしょっちゅうあったのではないかと思わないでもないんだが。 ホームズはもう少しワトソンくんに下手に出てゴメン言えばいいと思うんですけどね。

話がそれたけど、とにかくやっぱりドイルさんはホームズのことを嫌いでなんかなかったと私は信じてる。
まあそりゃ、他のが書きたいのに…ううー!ってうんざりする気持ちはわかる。こんなことになるんならホームズなんか書かなきゃよかったーとかそういう気持ちも何となく分かる。でもそれと、ホームズという人物そのものが嫌いかっていうのは全然次元の違う話だと思うんです。
どんなにしょうもないこどもでも、イライラさせられる・うんざりさせられるこどもでも、親はこどもを完全に嫌いになんかなれませんよね




4881357387ドイル傑作選〈1〉ミステリー篇
アーサー・コナン ドイル 北原 尚彦
翔泳社 1999-12

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