[感想]わが愛しのホームズ

4592860616わが愛しのホームズ
ロヘイズ ピアシー Rohase Piercy
白泉社 1993-03

by G-Tools



表紙がすごい恥ずかしい(画像がなくてラッキー)。
中身もなかなか恥ずかしい。
ワトソンさんがホームズを愛しちゃってる設定のパスティーシュ。
男性には読みづらい‥というか読む必要もないような気がする。

私としては、設定云々より文章の意味が読み取りにくく感情移入できない点が多かったです。
このタイトルに同意できるホームズ萌の方向けかな‥と思います。
ワトソニアンさんにはウケが悪そうです。

冷静になると萌えるところもけっこうありますが、全体に重い。





おおまかな感想


ワトソンさんが普通に同性愛者で、ホームズをどうしようもなく愛しちゃってる設定ですので、まずそこが許容できる方でないと読むのは厳しいと思います。ただ、下品な描写は避けられているようです。

一方で、いろいろ避けすぎたせいなのか それとも元々こういう文体の方なのか、なんのことだかよくわからない、何を意味しているセリフなのかわからない‥ということが私にはすごく多くて、困惑しっぱなしだった。

とはいえ、悪いところばかりではなく、終盤の展開は同性愛設定とかナシで採用してもいいんじゃないかなあ綺麗だな、という印象的なシーンがありました。全体的には切ないロマンスってところでしょうか。ただ、社会情勢が重くて辛いので、いつも悲痛な気配に追っかけられてる感じだった。
ワトソンさんは主に愛に悩みっぱなしで女々しい印象になっているので、ワトソニアンさんにはあまりオススメできそうもない気がしてならない。 でも私はそれなりに許容できたので、ホームズ萌え派の方ならわりといけると思います。



キャラについて


ホームズは、まあ、あんまり問題無いと思う。よくわからないのは相変わらずだし。
ワトソンさんは、女々しい点が目立った。でも社会情勢とつれないホームズに板挟みにあって深く愛に悩んでいるのだから、この程度の女々しさは仕方ないと私は思う。純情な人だからね。しかしほぼ最初から終盤までずっと精神がズタボロのボロ雑巾で可哀想だった。必死に感情移入しようとして読んでた私もずーっとツライ暗い擦り切れそうなボロ雑巾のような顔して読んでましたよ。ワトソンさんはずっと眼が死んでる感じだったと思う。あ、ホームズも結構そうだったけど。
メアリーの設定は、怒られそうでした‥。ワトソンさんの設定よりもメアリーのほうが問題かもしれない。
マイクロフトはなぜかやたらと嫌われ役状態になっており、ひどい扱いでした(笑)



同性愛設定について


ホームズの恋愛観は、現実的に見るとやっぱり変なので、こういう説に至っても仕方ない面はあるのだろうとまじめに考えることもできる。ばっさりとありえんと全面否定して非難しようとは思わない。 むしろホームズがワトソンさん好きすぎることは正典で見ても確実だと思う。特にワトソンさんの結婚にやたらと不満たらたらだったり、しまいにはワトソンさんの不動産をワトソンさんに内緒で(内緒でって言うところが特に)買い取ってまで一緒に住もうとしたりなどは‥普通とは思えない。
でも同性愛よりはなにか決定的なトラウマがあると言う方が私は‥ありだ(っていうか好きだ)と思うけども‥‥素敵な冒険みたいなああいう過去のほうがかっこよくて好きだ…

しかしコレ読んで思ったのは‥ホームズモノは、そこをハッキリ言及しないところがむしろ萌えるもんなんじゃないかなということだった(笑) 友情の領域のはずなのになんかほんと二人共仲いいなあ‥とか、主にホームズがワトソンさん依存症すぎるなあというところに萌えるのであって、はっきりと同性愛ですと言われると、意外と困る気分になった(笑) 邪推してるほうが楽しい気がする(笑)

私はワトソン→ホームズは妄想的にはわりとありと思ってる方なのに案外萌えなかった‥。なんでかな。やっぱり読みにくくて入り込めなかったからかな。設定があくまで重いからかな。
しかし終盤の20ページ前後くらいは、やっと楽しめるかんじでした(笑)


文章について


取り扱うテーマが同性愛なので、直接言及できないことが多いせいか、いやそういう問題ではないと思うんですけども、なんだかとにかく、これはどういう意味?というのがほんとに多くてね!
特にホームズの発言が、曖昧だというか、どうとでも取れるというか、わけわからんところが多かった。 ホームズの発言以外でもワトソンさんの発言でもメアリーの発言でも意味不明なのが幾つもあった気がするので、もうこれは作家さんの書き方の問題か訳がよくわからないのか‥どっちかはわからないけどとにかく、わかりやすい文章とはいえないのじゃないかと‥。読んでてこんなに、よくわからないな‥となる文章はあまり読んだことがない‥。

言ってることが全然すっと入ってこない イコール 感情移入できてないし、私には理解できない論理が働いている…のかも。 もうとにかく、この時この人物の気持ちはどう動いているんだ?ってのがほんとにわからないシーンがいくつもあって、困りました。でも意外とネットでの評価は悪くなかったんだよなあ、こんなに意味不明って思ってるの私だけかなあ? 私の頭が悪すぎるのかなあ???なんでやろ!! 波長が合わないのかな!?私は自分ではそれほど読み下手だと思っていないんですけど、いやほんと自分ホントはすごい読解レベル低いのかなって自信を無くしそうですorz この手の小説をあまり読んだことがないせいでしょうか…。

ちなみに誤字脱字も目立ちました。4~5箇所以上あった気がする。あ、誤字脱字は私の得意技なので、どの口が言うのだってかんじですけどね!

なお、パスティーシュとして、正典にどれだけ近いかというのはもう論外。設定がまずコレなので、そんなことを論じる必要はもうないと思う。読んでいて考えもしなかった。けどたぶん、あまり近いとはいえないとおもう。






以下ネタバレありで萌え語り



















萌えるところ


せっかく萌えるために借りたというのに、萌えどころを語っておかねば意味が無いわ!
萌えるところが全然ないわけではない。意味がわからないなあという私の困惑状態をナシにしてホームズの挙動だけを取り出して考えると萌えるところも結構ある。

前半は微妙すぎて少ないけど、ワトソンさんを高級ディナーにお誘いして、めかしこんで素晴らしい上品な振る舞いで何より眩いばかりに微笑んでるホームズはすごく萌える。まあ、演技の一種だけど、その演技をわざわざワトソンさんにしてあげるところがほんとにラブなんだけどな!でもワトソンさんはもうそれどころじゃなく沈み込んでてとにかく読んでて萌えてるヒマがなかった。鬱々なんだもん。
しかし、自分の気持がバレたらホームズになんて言われるだろうっていう想像は読んでて自分も絶望を感じました。心の底からホームズに失望され、軽蔑されるのは堪えられることではないです。見下ろす冷えきった灰色の瞳、考えるだけでぞっとする。精神的打撃が強すぎる。

別居宣言に超ショックなホームズや、結婚生活にやたらと不満のホームズも萌えどころなんだろうけどなんだか、彼の心の動きが全くつかめず、あんまり萌えられませんでした。どういうことだったのかなあ。自分でも自分の心の動きが分かっていないのか? わかってたらそんな幼い態度を見せるとも思えないしなあ。あ、後半でワトソンさんが推測してたっけか…不良行為に走るために捨てられて裏切られた気分だったって?なんだかそれこそワトソンさんを誤解し過ぎのホームズが理解に苦しむ。ワトソンさんの人物をもうちょっと理解してほしい。ワトソンさんの気持ちをどこまでわかっていたのかがさっぱりわからない。 とにかく意味不明なセリフに悩まされっぱなしだった。
あと、ワトソンさんに失望して激怒しているホームズは萌えた(笑) ワトソンさんに対して感情的になるホームズってのも案外見たことがないからかな。 ワトソンさんを冷酷に看破しながら脈を取るホームズには、ちょっ、読者としても心拍数が急上昇する‥!!!ひいっ となりました。

あと、やはりホームズがデレる終盤は萌えどころがけっこうあった。
よく考えてみると常に自分の感情を無視しているホームズが「デレる(本心を吐露する・向き合う)」ってこと自体が 特殊な設定をしない限りありえないできごとなんだよなそういえば。だからそういうパターンは基本的に萌えるところなんでした。

最後の事件に入ってからの追い詰められたホームズが、正典と違う取り乱した発言をしているところは結構萌えましたね! 偽手紙のところで「行くな」というところ、本心だなあと思ってときめいた。そのくらい人間味があればなあ‥。でも、あの人間味のないくらいヒーロー然として自分に酔ってしまってるとさえ思える正典の最後の事件が私は印象的で‥好きでもあるんですけどね。 「行き止まりだ」とか「もう耐えられない」とか意味深で感情的な発言をしているところは、結局どういう意味だったのか私にはよくわからんかったのですが‥、とにかくどんな意味であろうとホームズの自制心がボロボロになってるだけで萌える私なんだけどね。まあ‥この本のテーマから言うと、ワトソンさんへの想いとの葛藤なんかなあとは思ったけど‥、それまでの彼の内心が私にはさっぱり読み取れなかったので、結局全然わかりません。うん、なんかもう少しホームズの気持ちを読者にも分かるように分析して欲しかった。
ちなみに宿のオッサンは気持ち悪すぎてヒいた‥。この作品は、同性愛者の登場人物がやたらと多いですね。いや、それが悪いというわけではないです。そういう問題ではないよこのオッサンは下品すぎるよ。でもそういえば、こないだみたSHERLOCKでも宿のオッサンに誤解される展開が‥そういやコレと似てた気もする。この宿のシーンはホームズが気分最悪状態なのが萌えた。そういう意味で萌えどころじゃない気もするけど、軽蔑しきった様子のホームズってのも最高に萌えるのだ
ところでワトソンさんを人質に取られそうだから連れて行くという展開はごく普通に、同性愛設定関係なしでありだと思ってます前々から。

最後の事件よりあとは、ほんとに切ない美しいシーンが多くて素晴らしいと思いました。
特に、懐中時計を送ってよこしたところはすごく印象的で愛情に満ちていて!懐中時計を見た最後のホームズの姿を思い出すところはなかなか感動的だった。 パリでの二人の再会シーンも、「空家」の卒倒よりもずっとロマンチックで綺麗だなと思いました。光と影の中を向こうから歩いてくるホームズ、綺麗だな。同性愛設定をなしにしてこれをふつうに帰還の部分に採用してくれてもいいんではないかと思うくらいきれいだった。

「空家」でも結構ホームズは一生懸命謝っていたという印象があるんですけど、こっちだとほんとに真摯に謝りっぱなしでめちゃくちゃ申し訳なく思ってる様子もよかった。例の「孤独の悲哀」の意味がつかめなくて、ホームズの喪失についてだと思ってた時は、あのあたりはこれとほぼおなじような情景と感じていましたから。
それにしてもマイクロフトが完全に悪者になってて、いやー お兄さんどうもすいません‥てなった。私はマイクロフトは結構好きなんですけど、ほんとに書く人によってマイクロフトの性格と兄弟の関係が違う気がしてならないな! 私のイメージではマイクロフトはものすごくデキるけどどこかネジの外れた変人で、その変人ルールに則って兄弟の関係が、彼らにしかわからないレベルの特殊なバランスでごく自然かつ穏当に維持されているのであれでも全然疎遠とか険悪とかじゃないってかんじがいいと思ってる。嫌いだからじゃなくて、接触する意味もないし利益もないのでお互いほっといてるだけっていうのが。と、兄弟論が止まらくなるけど、とにかくこの話ではマイクロフトのひどい扱いにはちょっとがっかりした。二人には悪者扱いになっちゃってたけど、でもよく読むとお兄さんはまじめに弟の心配をしているとも取れると思いたい。特に、弟がワトソンさんから悪い影響を受けたと言ってるところが実は萌えどころじゃないでしょうか(笑) あ、ヴァイオリンに回想するワトソンさんは萌えました。ヴァイオリンいいよねー萌える。

あ、そうだ、それよりもすごく萌えたのは 「ちっとも面白くなぞなかった」です。本音だ!それが聞きたかった! 「空家」の感想書いててここはそう思ってた。この三年は面白かった!というホームズは絶対嘘だと思ってたから。ああ~嬉しいなあ‥。

終盤のはにかんだような内気そうな表情(←すごい!)で、一緒にいてほしいと言うホームズとか、君を養う収入あるし将来も有望って口説こうとしかねないホームズとかといった下手に出たホームズは実にかわいい、実に。「君さえ良ければ」ですね。上目遣いで!(妄想) これぞデレというやつか!たしかにこの調子だと、ワトソンさんの物件をこっそり買い取るのも納得がいくというものです(笑)

えっと、あと、あの、一緒のベッドの件は、ほとんど直接的な表現を避けてきた(チューもあったがスルー)この小説の中でさすがにここは一番それっぽい表現で、これはヤバイんじゃないかなと思った‥。っていうかホームズが可愛すぎてこんな従順で可愛いホームズは存在しうるのか?デレどころかデレデレかメロメロだ!!! こんなにデレデレになれるんだったらもう少し前からなんとかならんかったのかと思うけどな(笑)とにかく ここまでくると逸脱したかな、と思うけどまあいいか、楽しんだもの勝ちですね!! 腕枕でナデナデするとかなにこれ至福ですね!
いやぁ…(ワトソンさんに)メロメロのホームズってのも妄想するぶんにはなかなかいいですね…、絶対ありえないとわかっているからこそこの妄想はたまらんですね。このシーン、あまりも眠かったので寝ぼけて無意識で…という言い訳をつけたいかもしれないけど、ホームズに限って寝ぼけてなんてのはないよなと。他人の前でそんなにリラックスできる柄じゃないよな。いや、ずっと緊張状態だったのでとも考えられるか? いやいやないな。やっぱりメロメロなだけだな!
一緒に暮らそう!で終わってるけど、その後どんだけホームズがデレデレだったのかは ちょっと逆に見たくないですね(笑) これ以上のメロメロになるとさすがにたぶんイメージが破壊される気がする(笑)ダーシーさんが言ってたとおり、ホントはホームズはありのままの感情を自分に許可するとアイデンティティが崩壊してしまって自分を維持できなくなると思うんですよね。それこそ引退しないといけなくなると思うんですよね。だからメロメロのホームズってのは通常存在できない架空の存在なんだよ。
でもワトソンさんを大好きなことはいずれにせよ間違いない。

そういえばこの作家さんは指よりは髪に注目しているようですね! 髪萌ですね。ちょくちょく出てきて萌えました。




ん‥こんなに萌えといてあんまり萌えなかったとか言ってる私がウソにしか見えないですね
いや‥もっと萌えると思ってたんだよ、もっと感情移入できると思ってたのですよ。
読んでる間はほんとに暗い顔で読んでましたよずっと。
ワトソンさんの気持ちはほんとに暗いし‥しかも意味不明なところに戸惑い‥素直に萌えていられなかったんだよ‥

っとひとつ重大なことをわすれてた


恋愛を避けるのはスキャンダルに巻き込まれては困るからだとホームズが言うところがあったんだけど‥えーと「ぼくは社会的に恐喝者の餌食になるような真似をすることは許されないんだ」と言ってるんだけど、それはなぜなのかなっていうところがやっぱり私は気になった。ずっと気になっていることなんですよね。ホームズが仕事にすべてをかけるのはどうしてなのか。単に好きだからってのはわかるけど、それだけじゃない感じなんだよな、パスティーシュにかぎらず。そこは結局語られなかったですけどね、序盤でもちらっと言ってて理由はわからないって言ってたかな。「許されない」という表現。何に許されないのか。過去の依頼人の名誉のためですか? なぜ依頼人の名誉をそこまで守るのか? お金ですか? 自分の経歴のためですか? やっぱり真実と正義のためですか? その正義は何のために? 私にとってホームズの永遠の謎で、その謎がホームズを何より魅力的にしてると思うんだ。




ところで高い!?


あまそんで見ると絶版だからだと思いますがそれにしても高い!!!現在見ると8000円近い値段で売られてる!驚いた。そんな高い価値はないと思う‥。
ちなみに文庫だと思ってたら文庫じゃなくて微妙にデカイ割には中身はさほど厚くもなくソフトカバーだし、なんか微妙。どちらかというと、文庫にしてほしい。

なお私は県図書館で借りました。ホームズってさすがですね!! パスティーシュが図書館に揃ってるなんてさあ、すごいよほんとに!!
しかしこの恥ずかしい表紙には‥借りるのにも赤面しそうになった。


4592860616わが愛しのホームズ
ロヘイズ ピアシー Rohase Piercy
白泉社 1993-03

by G-Tools

関連記事
スポンサーサイト
[感想]競技場バザー - ドイル傑作選〈1〉ミステリー篇 | Home | [感想]シャーロック・ホームズの秘密ファイル (創元推理文庫)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する