[感想]ホワイトチャペルの恐怖〈下〉シャーロック・ホームズ最大の事件 (扶桑社ミステリー)

4594019285ホワイトチャペルの恐怖〈下〉シャーロック・ホームズ最大の事件 (扶桑社ミステリー)
エドワード・B. ハナ Edward B. Hanna
扶桑社 1996-03

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読み終わった!

…評判通り、謎めく終わり方だったんですけども、
なんかもう…まあいいや、そんなのまあいいや、というほど楽しませてもらった。
謎めく終わり方が嫌な人にはおすすめできないけど、私みたいにホームズが見たいホームズが!推理よりは、キャラクターを見たいと言う人には私はおすすめする
私は楽しかったですホントに。






概論


切り裂きジャックの真相は永遠の謎…ということをあくまで念頭に置いている真面目な作品のため、謎めく終わり方になってる。そのせいで評価はなんともいえない感じになっているようです。
たぶんスッキリと終わらないと嫌だと言う人にとっては がっかりさせられる本なのかもしれません。
でもまあ、私はそんなことはどうでもいい。
ホームズがカッコイイ
ホームズが可愛い
ホームズが悲痛
ホームズが孤独
そんなホームズが好きでしょうがない

心を揺さぶられた、楽しいこともあった、見ていて辛いことがあった、そんなホームズが好きでしょうがない。
という体験をさせてもらったので充分楽しかった…
そして、謎めく真相については、今度はホームズに頼るのではなくて自分で考えるのだ、この本はきっとそういう本なのだと思います。あなたはこの事件をどう考えるのか? どんな推理を、どんな説を立てようか? それとも永遠の謎として、心に秘めていくべきか…。読んで、みんなで話し合ってみるのが面白いんじゃないかなと思います。
私は…真相について…最悪のケースを想像したりして戦慄を覚えました。そんな想像が面白いような気がするんだ。
しかし全体に暗い話のはずなのに、そんなに嫌な気分にならないまま読み終えたし、個人的には印象はよかったです。




以下ネタバレあり

























ホームズの敗北


私、ホームズが苦しんでるの好きですね。たぶん、苦しんでいる時のホームズはいつもより欺瞞から少し遠ざかっているから。
下巻のホームズはずっと苦しそうで、苦しそうで苦しそうで、
最後には苦しみと怒りと悲しみとをぶちまけてくれて、
ただただ、抱きしめたいホームズだった。
動揺し、怒り、悲しみ、どうしようもなく、絶望し、打ちのめされ、諦め、改めて自分を騙し、騙しきれずに泣き出しそうなほどに、孤独で、何か誰かを求め、それはできずに口を閉ざしたけれど、けれど。
そんなホームズが切なくて愛しくてもう、言葉にならない。
けっこう、あれですね、パロディはホームズがひどい事件にあって苦しむことが多い気もするんですが、これほどに苦しんでボロボロに打ちのめされたホームズは他にあるだろうかと思うくらい、もう、ズタボロで、それでも愛情深くて愛しい。
つらい思いをするホームズを見たら読みても悲しくなりそうなんだけど、事件そのものは俯瞰すると改善の方向に進んだためなのか、それともやっぱり全体的に感情が愛に満ちているからなのか、読んで嫌な気分にならなかった不思議。でもホームズはズタボロ。
ああ、でもそんなホームズが大好きだ…
心を閉ざそうとしても、ワトソン君には 一生懸命背を向けながらも、心の手を、助けを求めずにいられない、突き放した言葉で、けれど言葉を投げかけるその矛盾。何も言わなければよかったのに言ったことそれ自体が、ホームズの弱さ、人間味、誰かを求めずにいられない孤独。そういうものを感じて、
あの悲痛な最後のシーンに徹底的に胸熱…ああ。


永遠の謎


結局真相はわからずじまいだけど、私がバカなだけかな。
でも恐るべき真相があるようですね 燃える
「僕が証明できる」の真意は一体何なのか、まさか! まさか…
知らない方がいいという真実は?やっぱりホームズは全てを知っていたのか?

単に空想を巡らせただけだけど、この全てがシステムの維持のために仕組まれたことだとしたら、事件だけが仕組まれたのではなくて、関わったすべての人の挙動が想定内の大規模な恐るべき陰謀だったとしたならば、ホームズの行動こそが誰かの手に操られていて、最も重要な実行者にされていたのだとしたら…。と、私は戦慄した。ホームズのあの取り乱し方や、自己欺瞞の必要性を語る言葉や、激しい後悔。望まない役割を避けがたい力で強要されたのではないか。ホームズが選ばれたのではないか。すべてを知り、全てを行い、全てを語らずに死ぬべき存在として…と思うと…。
だとしたらホームズを手のひらで操ったのは誰なのか。その「意志」は、誰のものであるかは、システム維持の集合的なものかという気がするけど、犯人といえる誰かがいるとすると、ものすごい存在でないといけない。マイクロフトにも気づかれない…? 登場人物の中にいるとしたら、マイクロフト以外にいないんじゃないか?って…。
大空白時代にも触れられていましたが、真実があの事件ではなくこの事件の一部だったとしたら…その姿なき恐るべき意志と陰謀は、最大の敵モリアーティ教授という実体なき存在に象徴されうるということなのだろうかと思ったりもする。
この事件は善か悪かではなく…ホームズの人生観を歪め、乱したものであるという、その意味でとてつもなく巨大で深刻なものだと思えます。社会がどうじゃなく、ホームズの痛み。
何もかもをホームズが知っていたとしたら、その「意志」に逆らえなかった心が、善悪の間で、アイデンティティと価値観の破壊にいかに苦しんだか、ああ、思わずにいられない。


もちろん全部妄想ですけどもね…。
ただ抱きしめたい


皇太子と二人


ワトソンVS皇太子!これはもう、素晴らしい見どころでした>< もう~ワトソンさん~>< あなた運を全部使い果たしたんじゃないですか…!! まったく不愉快そうに傍観するホームズがかわいいけどその苛立ちぶり、何かがおかしいと思っていたら…
ま、まさかの…あの男がこいつだったなんて…
わ、わたしは…
私は激しく動揺した。

まず、鎖の金貨をいじりだした途端に動揺した私のこの心!
そしてあいつがあの男だったのかと知った後に、走馬灯のように走る不機嫌で、子どもじみた敵意をもったホームズの態度、視線、ああっ… わ、私は…心をかき乱される、ジリジリと焼かれるようです。
ホームズの中に深い感情が、終わらない事件として存在しているのです。終わった事件の感情問題をすぐ片付けてしまいそうなホームズの中に。
叫びだしたく、頭を抱えたく、私の印象は…ほんと呆れたもんでしか無いから言葉にしたくない、でもやっぱり、ホームズのこと好きすぎて恋なのです今は

こんなところはみんな結構スルーかもしれませんけどね…私には超絶一大事。それでいて描きすぎてないところが、いや、素晴らしいバランス感覚で…した。数ページごとに心を揺さぶられたんだ。

あぁ……(嘆息)






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